日本自動車産業は、グローバル市場で省エネ車の成功を収めたものの、新エネルギー車時代においては前例のない試練に直面している。
新エネルギー車の「極致の省エネ性能」と「高度な知能化」は、日本車にとって越えることのできない高い壁となっている。
そんな中、中国市場で追い詰められつつある日本自動車は、全固体電池という「原爆」を投じるべく動き始めた。
本田が430億円を投じて全固体電池の実証生産ラインを発表したのを皮切りに、トヨタと日産もそれぞれ全固体電池の量産計画を正式に公表。
これにより日本自動車は、中国自動車産業の舞台を一掃しようとしている。さらに、日本政府が全面支援する動力電池計画も加わり、新エネルギー車市場への反撃が本格化している。
中国自動車市場への挑戦:固体電池で巻き返しを狙う日本
急成長する中国の新エネルギー車市場が世界最大の規模を誇る一方、かつての覇者フォルクスワーゲンは中国市場での競争力を失い、小鵬汽車や上汽集団との協力に舵を切った。
比亜迪(BYD)や寧徳時代(CATL)が磷酸鉄リチウムや三元系リチウム電池で競争を繰り広げる中、日本メーカーは自らの優位性を再構築しようと試みている。
日本はかつてリチウム電池技術で世界をリードしていたが、現在ではその技術の生死を分ける重大な岐路に立たされている。
日本自動車各社の計画によれば、トヨタ、本田、日産が主導する全固体電池は2027年に商用化が予定されており、2030年には国内生産能力を年間100GWh、全体で150GWhに拡大する計画だ。
また、世界市場向けの生産能力は600GWhを目指し、全固体電池技術のグローバル普及を加速させる構えだ。これにより、日本は新エネルギー車市場でのリーダーシップを再び手にする可能性がある。
マツダ(パナソニック):車載用円筒形リチウムイオン電池、年間生産能力6.5GWh、2025年7月稼働開始、総投資額833億円、政府補助283億円。
トヨタ:BEV 向け車載用電池、新構造BEV 向け車載用電池および次世代車載用電池、年間生産能力25GWh、2026年10月稼働開始、総投資額3,300億円、政府補助1,178億円。
トヨタ:次世代車載用角形電池および全固体電池材料、年間生産能力9GWh、2026年11月稼働開始、総投資額2,450億円、政府補助856億円。
ホンダ(GSユアサ):車載用及び定置用リチウムイオン電池、年間生産能力20GWh、2027年4月稼働開始、総投資額4,341億円、政府補助1,587億円。
日産:新構造車載用蓄電池、年間生産能力5GWh、2028年7月稼働開始、総投資額1,533億円、政府補助557億円。
スバル(パナソニック):車載用円筒形リチウムイオン電池、年間生産能力16GWh、2028年8月稼働開始、総投資額4,630億円、政府補助1,564億円。
全固体電池:新エネルギー車市場の覇権争い
全固体電池は「新エネルギー車産業の王冠の宝石」として位置づけられており、その初期普及には高コストが伴うことが予想される。
それでも日本車の高品質で優れた製造技術は、世界市場での優位性を確保する強みとなるだろう。加えて、全固体電池はわずか5〜10分での急速充電を可能にし、新エネルギー車の普及における最後の障壁を取り除く可能性を秘めている。
また、全固体電池は単なるバッテリー技術の進化にとどまらず、燃料電池車やハイブリッド車といった既存の技術にも革命的な進化をもたらすだろう。トヨタは2026年に新型エンジンと次世代バッテリーを発表予定であり、これにより電動化時代の革新を先導しようとしている。
中国自動車の優位性に迫る影
比亜迪や寧徳時代といった中国企業も、全固体電池の量産化を目指して動きを加速させている。
しかし日本自動車の全固体電池計画が商用化される2027年には、グローバル競争が再び対等な条件で展開される見通しだ。このため、中国自動車産業の「先行者優位」は失われる可能性がある。
日本自動車はすでに世界的な販売ネットワークと規模を持つため、中国企業が歩んできたような「ゼロからの苦労」を経験する必要がない。全固体電池の商用化が開始されれば、一気に世界市場を席巻する可能性がある。
日本 vs. 中国:未来の自動車市場の主導権をかけて
日本の全固体電池戦略は、中国の新エネルギー車が成し遂げた「オールイン」の成功と似た側面を持つ。しかし、固体電池技術の進化には「二度目のチャンス」がないと指摘される。
中国は日本自動車の「原爆」に備え、強固な「迎撃システム」を構築しなければならない。それによってのみ、70年にわたり築いてきた中国自動車産業の成果を守ることが可能となるだろう。
この次世代バッテリー戦争は、グローバル自動車産業に新たな地図を描くことになる。中国と日本、そしてその他の主要プレイヤーによる競争が、未来の自動車市場の行方を決定づけるだろう。